実りを問うな

育児、本、漫画、絵の日々備忘録

同人誌「籠目、鴎」制作過程メモ

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2021.9.11に配布した
同人誌「籠目、鴎」について


4月に開催された「軍曹会議」月島のオンラインイベントで公開したものを
書き直した漫画です。
生まれて初めてちゃんと漫画っぽくかいた漫画。
進撃にハマっていた時に初めて漫画を書いたのですが、
その時はページを考えない縦長の漫画でした。

同人イベントと言われると、すごくハードルが高かったのですが
オンラインなら、本などを用意しなくても、web公開やイラスト一枚だけでも参加でき
気軽だときいて、せっかくならちょっとがんばってみようかなと思い立ち、
はじめてクリップスタジオを入れて、見様見真似で書き始めました。
描いているうちに仕事が繁忙期になり
家に持ち帰って子どもを寝かしつけてからも仕事しないと間に合わなくなり
時間がどんどんなくなって
当日の朝まで描いていました(笑)

テキストの入れ方もわからずもう後半はクリスタ で作業しないで
使い慣れた別のソフトなどを駆使してあげました。きったない(笑)


月島とちよちゃんのエピソードが好きなんです。
駆け落ちの約束をしたまま、離れ離れになるなんてなんて悲しいんだろう。
ちよちゃんにとって月島はどういう存在だったか描かれていませんが、
月島にとってちよちゃんがどれだけ大切だったかというのは
原作を読んですごくすごく感じるので、
たぶんちよちゃんも月島のこと大好きで
彼の中に自分にないものをみて
眩しかったんじゃないかな。
かけおちを持ちかけられて
耳を赤くして喜ぶくらいには好きだったんだと思います。

「だすけんはじめちゃんはみんなに嫌われたっちゃね」というセリフ
これは金カム全体に流れる「暴力性」を考えるにしても
すごく意味のある深いセリフだなと思います。
でも月島には暴力には暴力でしか返せなかったし、その才能はあって
やるせないけどしかたないけど、月島の自分へ優しさをわかってるからこそ
ちよちゃんがあの言葉を月島に言えたのかなって思います。
あの時代、あの場所では
「しようのないひとね。」
そういう、やさしい響きをあの言葉から私は感じているのです。
ちよちゃんを思い出す時、その言葉がでてくる月島よ…

ちよちゃんについてはいろいろ妄想をしていて、なぜはみ出しものの月島と仲が良かったのか癖毛だけでそんなにはみ出しものになるのか、もしかしたら違う土地の血が入ってそれが原因だったのでは…隠れキリシタンだったのでは…などいろいろ考えていました。
(傷を痛がる二階堂に、ちよちゃんから教えてもらった賛美歌を、子守唄として月島が歌う話を描こうと思いついていたのですが、調べることが多すぎて断念しました)

これを描いている時は、ちよちゃんが生きてるか死んでいるかわからない状態だったのですが
生きていて、お嫁に行った場合、どう生きているのか、
どう月島を想っているのかを想像してみたくなったんですね。
みんなが笑い、からかう髪を、「愛しい」といってくれる男の子が
死んでしまったと聞いたなら、どんな想いだったろうな
兵隊になんてなってほしくなかったかもしれないけど、
島で漁を手伝うこともできず、(住民との関係が悪かったらできなさそう)
自立をするには軍隊しかなかっただろう月島と
島を出るのを楽しみにしていたらと思うと
かわいそうで仕方がなかった。

でも、お嫁にいかないと生きていけないという背景も
この時代ならあるわけで、月島への思いをどう胸にしまって
お嫁にいったのかなって。

あとは当時の女性としてのやるせなさも少し入れたかった。

鶏のように囲われて産まされて食べ尽くされるか
カモメのように、寒さを避けて環境を変えつつ狩をして暮らすか(渡り鳥なので)
どちらの生き方も辛さも難しさもあるのですが
できたら、つらい場所なら、自ら飛び立てる世の中であってほしいと願うんじゃないかな。


そして「産むことを求められる性」であるちよちゃんの、
産んで得る喜び、それに伴い何かを失う感覚とか覚悟とか想像しました。
ちゃんとそこ表現できてるかどうかわかりませんし
今読むとちょっとわかりにくいし
なにいってんのかわからないとこもあるし
構成もよくないなと思ったりするのですが、
思い出深い漫画なのでちゃんと描き直して本にしました。

前回の本(東京物語)でクリップスタジオに少しなれたので、全部一応書き直しています。
一番の違いはひとつの見開きのページです。
カモメを介して月島とちよちゃんを同じ画面に入れたくて。
どんなに離れていても、幼い日に交わしたあたたかなものは生きていて
お互いの心を少しだけあたためていたらいいなという想いを込めました。

 

鯉登少尉との最後のやりとりのところは
月島が本誌でハイライトはいっちゃったので笑顔を無くして書き直しています。

連載が全部おわったら、またそれをうけて二人のお話をかければいいなと思います。

 

イメソン、ずっと聞いてたのはあとがきにも書いたのですが矢野顕子さんと三味線奏者の上妻宏光のユニット「やのとあがつま」のアルバム「Asteroid and Butterfly」
あとはミュージカル「ウエイトレス」の挿入歌「she used to be mine」を聴いていました。現実に打ちひしがれて、少女時代の、変わる前の自分を歌った歌です。

 

生きていくというのも、命を紡ぐのも、簡単なようで難しく、
それはずっと昔から変わらないなぁと
近代ではありますが100年前を舞台にした金カムを読んでるとしみじみおもいます。


おわり。